初夏の夕焼けは、夜の境目が曖昧だ。昼の名残の水色と、ぼんやりとしたピンク色。
蛍観賞会、というカーラジオのCMにまんまと乗せられ、行ったことのない森林公園へと車は向かっていた。運転しているときの倉持は、いつも以上にフットワークが軽くなる。
「蛍って、大人になったらもう何も食べないんだって」
子どものころに食べた栄養だけで生き、それが尽きると死んでしまう。幼いころ見た蛍の姿より、その知識のほうが印象深かった。きれいなものは、すこしだけさみしい。
「へえ、俺蛍じゃなくてよかった。亮さん博識っすね」
さっぱりとした物言いを好きだと想う。大人になっても、こうしてお互いを分け合うみたいに一緒にいる。子どものころより、ずっと貪欲に。
俺も、蛍じゃなくてよかった。言葉にはできない、熱のないひかりが心の中に灯る。
fin.

※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます