真剣な眼差しの真意、とか。知っている。湊はそんな表情で、冗談なんか言わないことを。
「もう観念しなよ、静弥」
握られた手を振りほどけない。湊のことはなんだって信じられる。いちばん大切で、これからもそばに居たくて。並んで歩くことが、物理的に不可能になったとしても、心だけは寄り添えると。
それで十分だから。互いの「好き」に生まれていたはずの差を、嘆きも恨みもしていなかった。だけど、
「静弥が好きなんだ」
まさか、信じられない、という言葉しか浮かんでこない。ただひたすらに信じて待つだけの、いびつな関係から抜け出したとき、これでいいと思った。きっと正しい方向に向かえるからと。
「でも、」
「違わない」
目をそらしたかったのに、ままならない。あのときみたいに、その瞳に吸い寄せられる。
「おれの好きも、静弥の好きも、いっしょだ」
湊、君が好きだ。もういつから好きだったかは覚えていない。初めて会ったときからそうだった気もするし、君を失うかもしれない恐怖に怯えたときからそうだった気もする。君を守れるならどんなことでもしたかった。
でも、それだけでよかった。この想いは僕だけのもので、見返りなんて求めていなかったから。湊にとってなによりも大切な弓を、いっしょに引きたいと言ってくれた。それだけで十分すぎるほどの見返りだったから。だから、
「こんなの、成就するなんて思ってなかったんだよ」
もっと正確に言うなら、成就していいものだと思っていなかった。不安で心許なくなる。本当に、いいのだろうか。湊は、僕は、これで大丈夫なのだろうか。
「大丈夫だよ」
ゆるりと笑った、目元のやさしさがまぶしい。
いつだって湊は目映くて、なによりも輝く宝物のようだ。
大丈夫、信じられる。湊が言うなら、間違いはない。湊のことは、なんだって信じられる。
「僕も、湊が好きだ」
こちらを握る手に、もう片方の手を重ねた。「うん」と嬉しそうに笑った顔にまた、好きが募る。
僕をこうして観念させられるのは、湊しかいない。それは少し困ることでもあるけれど、だからこそ湊が好きなのだ。
fin.

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