包んだ両頬から伝わる、繊細な細さが随分といとけない。薄く開かれたままのくちびるを、重ねるだけのキスで奪う。眼鏡の奥の、大人びた印象の瞳は伏せられることなくただしばたいていた。ちぐはぐで危うい。はじめはそんな印象を抱いた。そして今も。やってしまった。あんなに誓ったはずなのに。
「その先は、」
どうしたものかと手を離そうとした矢先、この距離でないと聞き逃しそうな、小さな声がすべり落ちる。
「教えてもらえないんですか?」
そうくるか、この優等生は。これだから油断ならない。普段のように悪態を吐くより、よっぽど効果的だろう。堪えるような、切なげな笑み。少しふるえた指先が、こちらの頬にふれる。いけないことは山ほどある。それを振り払えるほど、こちらも大人ではないんだよ、残念ながら。
fin.

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