ほとんど読んだことがない、ということで遼平の家で漫画を読むことになった。最初は見慣れぬ紙面をどう読むのかわからず難儀したが、額を寄せ合い読み方を教わっていると「愁くんに教えてあげられることがあって嬉しい」と遼平は笑っていた。
三冊目を読み終える。もうずいぶん慣れてきた。
「ごめん、この部屋寒い?」
次の巻を取る前にすこし両手をこすり合わせただけなのに、遼平はそういうところをよく見ている。
「じっとしているからかな。手だけすこし」
「わ、ほんとだ。冷たいね」
ぬくい指がふれる。たちまち互いの指を絡めるように握られた。マメが潰れて固くなった感触が、手のひらに伝わる。移される体温が鼓動を早める。
「あったまってきた?」
教わっていることはたくさんある。こればかりは、どうにも慣れない。
fin.

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