4.アンシャンテ:はじめまして・あなたに会えてよかった(呼ぶ 青い 指先)/湊静
水槽から透けた青い光が、あたりを満たしていた。
「そこ、足元気を付けて」
「わかってるよ」
足元のライトがあっても、水族館の内部は暗い。先を行く静弥の足取りは軽い。幼いころ家族ぐるみで共に訪れた場所は、記憶のままだったりそうでなかったり。ふたりだけで遠出している、というのも相まってこちらも心を弾ませてしまう。
「すごいね」
吹き抜けの水槽を見上げながら、うんと返事をする。たしか昔もここで、初めて間近で見る海水魚たちを見上げていた。這うようにやってきた大きなエイの、ちょっと間抜けな顔にふたりで笑った。
「湊?」
静弥が呼ぶ。引っかけた指先を絡めてつなぐ。過去と、今。それから未来。来られてよかった。小さくつぶやいたら、つないだ指が握り返された。
fin.

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