21.オリエンス:東・日が昇る方向(鼻筋 こぼれる 林檎)/遼愁
彫刻みたいだ。すっと通った鼻筋と、長い睫毛にふち取られた目元。カーテンからこぼれる朝陽の中、象牙色の肌は光をまとっているようで、ただひたすらきれいだと思った。芸術家は、こういう瞬間を残したいから作品にするのだろうか。まあそういうのをじっくり見たことはないんだけど。でも愁くんの顔ならいつまでも見ていられる。
ぴくりと動いた瞼が、ゆっくり開けられた。まだ焦点の定まっていない瞳。朝いちばんに、好きな人のそこに自分が映っているのは幸福だ。
「おはよう、愁くん」
「……目の林檎、」
「え?」
「本当だな、と思って」
ふふ、と笑って愁くんが寝返りを打つ。呼びかけても、返ってくるのは寝息だけ。どういうこと? という戸惑いより、愁くんが寝ぼけてる、という発見の方が嬉しい。
彫刻だったら、できないこと。
fin.

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