お願いされたとおり三人が収まった写真を送信して、しゅぽんっという通知音が鳴ったタイミングだった。
「なに?」
「いや……」
実にさりげなく伸ばされた手が、亮介の指にふれた。振りほどくほど大きな反応をしたほうが怪訝だろうか。
人さし指同士、絡められたそこを少し動かしたがほどく気はないようだった。
「周り、」
「わかってる、っす、けど……」
「けど?」
尖った声が出たことは、倉持だってわかっただろう。それでもやめない。一本だけでなく、亮介のものより大ぶりな手全体で人さし指を握られる。ちいさな子どもが親のそれを握るように。すり、と付け根を親指でさすられるとなんとも表現しがたい痺れが走って、身じろぎそうになる。
「今のうちに、さわっておこうかと」
うつむいて、決まり悪そうに言うものだからこちらとしてもつい「すけべ」と声にしていた。
「ちょ、そーじゃなくて!」
弾かれたように手が離れる。倉持はすぐにしまった、という顔をしたが、亮介自身も同じ顔をしていないか不安になった。強い日差しがうなじを焦がす。
「次、いつ会えるかわかんねーじゃねーっすか」
倉持はまだ知らない。次の試合も亮介たちが観に来る予定であることを。先ほどスタンドで決めたことだ。けれど「すぐまた会えるよ」という言葉は喉から出てこなかった。
嬉しかった。さみしがってくれることが。グラウンドと観客席、卒業した先輩と現役の後輩。見えない膜を取り払って、隣でこうして求めてくれることが。
「もう少しさわっとく?」
亮介のほうから手を差し出す。何も言わず、すばやく周囲に目配りをしてから倉持もそれを握った。はたから見れば握手をしているようにしか見えなくても、互いにはわかる。
手のひらの大きさ、指の長さ、皮膚の感触、骨の硬さ、体温さえ。よく知っていたはずなのに、改めてひとつひとつのかけがえのなさに吐息が洩れる。
観に来てよかった。うしろ暗い気持ちを塗り潰すほどの鮮やかさで。同時に負けていられないとも。俺の高校野球は、これまで歩んだ道は、何も間違っていなかった。
倉持の集合時間まであと少し。三日後も亮介が試合を観に来ることを倉持が知るのは、またあとのお話。
fin.

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