彗星捜索鏡【御白】

本当は、気づかないままでいたかった。あの日ちいさな傷ができたこと。それがずっと膿んでいたこと。
「二度と会いたくなかった」
「文句は鳴に言えよな」
「もう言った」
そしてすでに「いーじゃんべつに」で流された。昔から変わらない、あまりの屈託のなさに毒づく気も失せ、本人へあたりにきた次第である。
「お前がいると酒がまずくなるだろ」
「まあまあ、記憶なくさねぇように気をつけろよ~」
「なになに、なんの話?」
「こっちの話」
食いついてきた成宮をいなして、御幸にも「言うなよ」と牽制の目線を送る。当の本人はおどけたように笑ったが、すぐに話は切り替わった。
同じ軌道を巡り続けるのも、膿み続けた傷の痛みを認めるのも、いつかなにも かもすべて燃え尽きてしまうのも、あのころはすべてが恐ろしかった。
そんな軽口も態度も、残った傷あとに響かないのが不思議だった。
あとは残れど、きっともう膿んで痛むことはない。
ちっぽけで塵みたいなプライドも、閃光になれば誰かの目を奪うだろうか。
駆け抜けたあの一瞬だけでも、たしかに交差する時間はあったのだ。

fin.

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