どこもかしこもよくできている。頭のてっぺんからつま先まで。もし、神様という存在が人間を形づくる役割を担っているとしたら、愁を手がけたときはいっとう上機嫌だったに違いない。神様の自信作、と名付けられていたりして。
夏でも素足を好まない愁の、ちいさな貝がらみたいな足の爪を意識してはっきり見たときはけっこう感動した。こんなところまで行き届いてるんだ。
とはいえ、外見が違っても好きになったとは思う。端正な顔立ちは愁の魅力のひとつだけれど、惹かれたのは所作の美しさや心根の優しさ、誠実さだから。いい人だな、親切だなというきっかけから、もっと知りたくなって、ふれたくなって、気づいたら特別になっていて。
「愁くん……さわってもいい?」
こくんと頷いてくれたのを確認してからそっと背中へ腕を回して、閉じ込めるみたいに抱きしめた。愁はもともと口数が多いわけではないけれど、自己主張ははっきりしている。だからこういうときに、少しあいまいな返事をするのがかわいかった。委ねてくれていると感じられるから。
腕の中の、遼平より少し低い体温の身体が少しずつ熱を帯びる。それを実感するたびに、嬉しすぎてなんだってできるんじゃないかと思えてくる。
たとえばあのちいさな爪に口付けて、忠誠を誓ったって構わないくらいに。
fin.

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