俺と亮さんの誕生日はほとんど一ヶ月とすこしの距離しかあいていない。亮さんの誕生日を終えると、すぐさま「それで倉持はなにかほしいものある?」と聞かれるので恋人同士として誕生日を祝うようになってから亮さんは俺の誕生日を忘れたことはない。
もちろん俺だって亮さんの誕生日を忘れたことなど一度たりともない。出会って間もないときは、知らなかったのでノーカウントとして。
正直、亮さんにもらえるものならなんだってうれしいので「なにかほしいもの」と問われて毎度答えを探すのはむつかしかったりもする。正直になんでも嬉しいですと答えると「そういうのがいちばん困るんだけど」と睥睨されてしまうので。
それに亮さんのほうがモノに執着しないフシがあるし、こちらは毎回日にちがかかっても答えを見つけるようにしているのだった。
亮さんが、俺のためだけにプレゼントを選んでくれる。俺はこの上ない果報者である。
「大げさだなあ」
くすくす、ちいさく笑いながら亮さんがゆるめに結んでくれたネクタイから手を離した。
今年のリクエストは身に付けるものだった。俺がどんなスーツやシャツを持っているのかも当然知っているので、紺色の生地に細かな白いドット柄の、夜空みたいなネクタイは驚くほどしっくりと俺に馴染んでいる。
「誕生日おめでと」
「ありがとうございます」
お礼を返したら、亮さんのほうからやわらかく口づけられた。
こういうときは、とことん甘やかしたいとおもわれているときだ。
このごろの亮さんは、どうにも俺を甘やかしたいらしい。厳しいときはもちろん厳しいけれど、だいたい甘やかすタイミングを狙っている。
甘やかされること自体はとても魅力的ではあるが、どうにも複雑でもある。こうして俺が歳を重ねたって、亮さんにはてんで追いつけないようにできているのを改めて意識させられてしまうから。どうがんばったところでこのたった一歳の壁は超えられない。亮さんのほうが誕生日がはやいので、同じ年齢になる瞬間さえない。それがたまにもどかしい。
一日だってはやく、亮さんのとなりに並んで恥じないような自分になりたいのに。
誕生日を迎えるたびにそう決意はすれど、知ってか知らずか亮さんは自身の誕生日より俺の誕生日のほうが嬉しそうにしているのだから参ってしまう。
だって上機嫌な亮さんほど、かわいいものはないから。
「こうしてるとさあ」
「はい?」
うなじから、首すじをなぞって指先が結んだネクタイにふれる。
その手の動き、悪いことをおもいついたような含み笑い、なんだってこちらをかき乱してしまう。
「首輪かけたみたいで、かわいいね」
そういって、くちを開いて舌を出されたのでいいたいことはぜんぶ押し殺して従順にそこに口づけた。いい子いい子って、頭をなでられてほとほと弱る。
かわいい以上の言葉って、ないのだろうか。
身も心も、いくら差し出したって足りやしない。
あなたにこんなにも愛されているのだから、俺は生まれてきて本当によかった。
fin.

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