無い物ねだり【東向】

欲しいものほど手に入らない。すぐ目の前にいるのに。さわることもできるのに。手に入っただなんて実感は一度もなかった。

「俺、またなんか怒らせた?」

こちらから無理やり床に押し倒したのに。痛そうな顔をしたくせに。すぐいつもみたいに、困ったように笑うんだ。そこがムカつく。笑うなよ、怒れよ。
伸ばされた手が前髪の束をすくって、耳にかけ直す。振り払いたくなるほどに優しい手つきで。そういうことをしてほしいわけじゃないのに。

「ごめんな」

知らないふりが上手くなる。なにに怒っているのかも、なにに謝っているのかも、知らないふりをして慰め合う。お互いに、手に入らないから望むのだ、近くて遠いものを。確実に手に入るとわかっているものだけを求められたら、どんなによかっただろう。
18.44メートルよりも、ずっと近くにいるのに、今は。

「もう喋るな」
「うん、ごめん」
「喋るなっつってんだよ」

くちびるで塞いでも、これっぽっちも満たされない。優しいだけの行為は空しさばかりが降り積もる。
なんだってコントロールできるのが気持ちいいはずなのに、どうしようもないことに翻弄されて、かき乱されて、追い詰められて。そんなことが快感だなんて、どうかしている。こんなやつが好きだなんて、どうかしているんだ、俺は。同じ感情が返ってくることがないのを、わかっているのに。
もしも反対の立場だったら。もしも、情動的に組み伏せられたら。くだらない妄想だけくり返して、夢は遠くに続いていく。

fin.

190515
沢村さんのお誕生日に突然東向を書く女がわたしだ。なんかとにかくどうしても書きたかったのとお題にそれっぽいのが出たから書いた。
どうしようもない東向が好きなんです。めっちゃ好き…。ノンケの金丸が好きだけど自分の気持は伝えるつもりがない東条くんと、そういう東条くんが好きだから付き合ってる太陽チャン、めちゃくちゃどうしようもなくて好き。東条くんは太陽チャンに情はあるけど恋愛感情ではなくて限りなく性欲って感じ。とはいいつつ最終的にはちゃんと好きになってくれると思いますね、東条くんはいいやつだから。
ふらみんさんには「欲しいものほど手に入らない」で始まり、「知らないふりが上手くなる」がどこかに入って、「夢は遠くに続いていく」で終わる物語を書いて欲しいです。 #書き出しと終わり https://shindanmaker.com/851008

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