そういえば、と思った。ゲーム大会が終わりみんなが帰ったあとの部屋を片付けながら、記憶を遡ってみる。朝いちばん、みんなが集まったとき、ケーキを食べたとき、プレゼントが渡されたとき。そこにいたのは間違いないけれど、果たして言われたのかどうかがあいまいだ。
「オレ、言われてないよね?」
食器を片付けに一階へ行っていた海斗がちょうどよく戻ってきたので尋ねたが、「何が」と一蹴された。いや何がじゃないんだけど。
「だから、おめでとうってまだ言われてなくない?」
もう夜なのに。弓道部男子みんなで集まってゲームしてケーキ食べてプレゼントもらって、女の子と過ごさない誕生日なんてずいぶん久しぶりで。もちろんすごくすごく楽しかったわけなんだけど。
「……言った」
「えー、言ってないっしょ」
「言ったっつーの」
「ウソだあ、いつ?」
「……」
そこで黙るからダメなんだよと言いたいけれど、簡単にウソを重ねられる海斗なんて見たくない。ひねくれてるくせに愚直で、そういうひとつひとつが面倒くさい、んだけど。
「ほら、いまならもう誰もいないよー。照れてるだけならいまがチャンスだよー」
「なんでそういう言い方しかできねーんだよ」
それはこっちのセリフだけどね。苦々しい顔しちゃってさ。
ほれほれ、と両手を広げてみても、海斗はなぜか言いづらそうにするばかりだ。関係性に変化が生まれてからというものの、イマイチ照れのポイントがわからない。はあ、とひとつため息をついてから、七緒のほうへ歩み寄り同じ目線にしゃがみこむ。おや、と思う間もなく、引き寄せられてキスされた。
「――身体でごまかさないでよ」
「……だから、なんでそういう言い方しかできねーんだよお前は」
だって、ごまかされちゃうんだからしょうがないじゃん。
もう一回、と目をつむったら、小さな声で「おめでとう」と聞こえた。ほんと、わけわかんない。面倒くさい。なのに全部ひっくるめて、好きだとしか思えないのは、惚れた弱みというやつで。
「プレゼントは俺だよってこと?」
「そりゃ先月のお前だろ」
ドア開けっ放しなの、忘れてるのかなと思いつつ、どきどきしながらくり返す。
誕生日に、好きな人とキスをしている。きっと一生、忘れらんない。視界が滲んだのは、息つぎがうまくいかないせい。
fin.

※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます