推しとは、いついかなるときも最高である。存在していることがすでに尊い。整合性の取れないシナリオにチープな演出、低予算であることが逆にグロテスクなゾンビたちがひしめく壮絶な映像の中でも、彼女は変わらずひときわ輝く星のようであった。しかし、だからこそ、もうちょっとなんとかならなかったのかこの映画。
「やっぱり夏はホラー映画ですね。戦慄村娘シリーズのオマージュまでありましたし、近年のアイドルホラーではかなり良作だと思いますよ」
「知らん。どこだよオマージュ」
「ほら、ゾンビの群れをかき分けて、泳ぐように進んでいくシーンがあったでしょう」
本村は実に楽しそうに映画の感想を話し続けていた。まだ耳元で、彼女の悲鳴がこだましている気がする。迫真だった。真面目で努力家な彼女らしく、必死に取り組んだに違いない。こんな映画でも。ますます尊い。最高に推せる。だからこそ、もっとキラキラした青春映画で初主演を飾ってほしかったのに。
「のりりんのアクション、よかったですよ。やはりアイドルは常日頃歌って踊っているから身体能力が素晴らしい。みどりの子もよかったですし」
「まえしょんな」
「この映画をきっかけに、今後女優としても活躍の場を広げるかもしれませんね」
普段どんなに推しの魅力をプレゼンしても上の空のくせに、ホラー映画となった途端にこの大絶賛。
そう、推しは素晴らしい。推しは最高。そんなことは明々白々、だけどこやっぱりの映画を絶賛するのは違う気がする! 嗚呼推しよ、闇のシュバリエをお許しください!
fin.

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