ダイヤモンド【湊静】

幸せすぎて怖いかも。湊とふれ合っているとよく思う。無意識に口にしていることもあって、そのたび「怖くはないだろ」と困ったように笑ってくれる。
だけどまれに「これくらいで満足しないでほしい」と、もっと怖いことを言われることもある。そうなるともう、胸の奥に燻る欲望を引っ張り出されて、ただ溺れることしかできない。いまみたいに。うなじにやわく噛みつかれ、その硬い歯の感触にさえ感じた。
「ごめん、あとついた」
「ん……っ」
ふと正気に戻ったように舌でなでられ、余計に息を詰めることになる。そんなに強く噛まれたわけじゃないから、きっとすぐ消えるだろう。湊の歯のかたちに、自分の肌が窪んでいるのを想像する。自分では見えない場所。湊につけられて、湊しか見ないかたち。
はじめて抜けた歯を、湊が宝物のようにこっそり見せにきてくれたことを思い出す。ふたりで屋根の上に向かって投げた、あのちいさな白い粒。同じ時期に前の歯が抜けたときは、お互いの間抜けな顔を指さして笑い合った。
怖いものなんてなんにもなかった、あのころ。
「――湊、もっと……」
強引にして、痕がのこるほど強く噛んだっていいのに。夢じゃないって、現実なんだって、いやでもわかるくらいに。
「もっと、何?」
背中から抱きしめられて、密着したところがじっとり汗ばむ。身体の中に、夏の太陽をはらんでしまったみたいだった。
もっと、もっと――怖いこと、して。

fin.

17.ダイヤモンド 湊静
使用ワード:うなじ 燻る 強引に
ダイヤモンドは説明不要ですね。でもどちらかというと「燻る」が難関ワードだったためそっちから考えてます。あとはダイヤモンドは硬い、から連想してうなじを噛む湊くんが書きたくて…。湊静の幼少期回想を一瞬でも挟むのが楽しくなってきてる。最初は「溺れる」が「喘ぐ」だったのですが、全年齢なのでぼかしました。
これだけなんでこんなにえっちな感じになったのかはよくわからないんですけど、受けのうなじを噛む攻めが大好きなのでこれ幸いと書いてしまった。うなじ→噛む、燻る→燻る欲望、で連想したのでそりゃもうえっちになりますよね。「強引に」は最初「強引にしないところが好き」って書く予定でした。ダイヤモンドの語源である「無敵」「征服されない」ってあたりも入ったような入ってないような…。

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