「静弥、トリックオアトリート」
秋の、すっかり陽の落ちた帰り道。やけに顔つきが緊張気味だった湊がそう言って立ち止まった。ああ、遼平や七緒がやってはしゃいでたやつ。
「はい」
おこぼれに与った飴をポケットから探って取り出す。なのに湊は明らかに不満げな顔をした。おかしいな、そういう趣旨の言葉のはずだが。
「……いたずらしたかったのに」
あーあといじけて歩き出そうとした湊の肩を「待って待って」と思わずつかむ。湊のいたずらって、一体なに。
「していいよ、いたずら」
湊の表情がぱっと輝く。なにをされるか予想を立てているうちに、喰まれるようにくちびるを吸われた。予想外の展開に硬直している僕を見て、湊が「大成功」と嬉しそうに笑う。
たしかに外でキスされたのは、初めてだけど。飴より甘いのに、いたずらなわけないだろ。
fin.

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