トパーズ【荒垣+樋口】

春に現れた後輩によって、放課後の過ごし方は激変してしまった。部活必須の辻峰で弓道部を選んだのは、なるべく楽でうるさく言われなさそうという条件に合致したから。入部時点で三年生の部長がひとりしかおらず、去年の夏前にはとっとと引退していたので顔も名前もぼんやりしか覚えていない。荒垣とふたり、たまにゴム弓を引いたり暇つぶしに動画サイトで引き方を調べてみたりしつつ、引退までに中るようになればいいねえなんてのんびり話していた、はずだったのに。
「荒垣〜背中熱い〜」
「また筋肉痛か?」
痛いというよりは、これまで意識して動かしたことのなかったところが熱を持っている。コーハイキンだかソーボーキンだか、いちばん大きい後輩が言っていた気がする。後輩なんて縁遠い存在だと思っていたのに、いつのまにやら三人もできた。
夕方のあぜ道を自転車でゆっくり走る。それは一年前から変わらないけれど、話題はすっかり変わってしまった。二階堂はスパルタだとか、不破がくれたお菓子がおいしかったとか、スクワットをする大田黒に乗っかるとやる気を出すのでおもしろいとか。
「明日はさあ、いっぱい中るといいねえ」
「うん」
樋口がこんなに動いてるのを初めて見た、と荒垣に言われたりもしたが、樋口も荒垣が己の横顔以外に見惚れるのを初めて見た。
二階堂の射は、『楽』を『楽しい』に変えるだけの説得力がある。あそこまで美しくできなくても、中ると楽しいのを教えてもらった。想像もしていなかった未来へ導かれるのも、同じく楽しい

fin.

3.トパーズ 荒垣と樋口
使用ワード:夕方 熱 見惚れる
トパーズはさまざまな縁を結びつけ、良い方向へと導くとされている石、というあたりから。これは間違いなく二階堂に導かれる2人だな~と思って。11話の断片的な回想から、なんで2人がついてきたんだろうって考えるとやっぱ二階堂の射が美しかったからなんだろうなと思います。一緒に自転車通学してるのかわいい!絶対そのシーンで書く!と思って書きました。(円盤3巻のブックレットネタ)
依頼の時点で1年時か2年時の2人って指定があったので、基本は2年生時だけどちょびっとだけ1年時の様子も入れました。また、回想の中でこの2人が初めて(おそらく)中ったときの「嬉しい」「楽しい」って純粋な感情表現が好きで…それが巡り巡って二階堂自身を助けてくれたのがよかったなと思います。

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